三宅隆介
それから次に、教育長に教育問題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。昨年4月に新しい学習指導要領が導入をされました。この新しい指導要領は、それまでの教科の学習内容の中身を何と3割も削られてつくられたということは、教育長はよく御承知のとおりだと思います。言ってみれば、学力の低下など存在しないんだと言わんばかりに、文部科学省が強引に導入したと言ってもいいと思うんです。ところが、学力の低下が叫ばれたと同時に、文部科学省は今度は確かな学力の向上を掲げて、学力向上アクションプランなるものを来年度概算要求の中に計上しているんですけれども、当然、これは本市の教育行政にも影響を与えるものだと思うんですが、あれほど学力低下などはあり得ないと言っていたにもかかわらず、なぜ今、学力向上アクションプランなのかというところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
教育長(河野和子)
なぜ今、学力向上アクションプランなのかという御質問でございますが、現在、社会は大きく動いておりまして、非常に変化が激しいわけでございまして、価値観も多様化しており、複雑な社会で課題も山積しておるわけでございます。このような社会の変化に対応するためには、これから生きていく子どもたちは、その社会の変化に対応できるように常にみずから考えて学び続けるという、そういう姿勢が望まれておりますし、また、課題を解決する力も重視されているわけでございます。そこで、学校では、基礎基本としての知識や技能はもちろんでございますが、みずから学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力、そして問題解決能力などの資質や能力を含めた確かな学力を身につけようというふうに考えているわけでございます。文部科学省が推進しております学力向上アクションプランは、確かな学力を向上させるための総合的な施策でございます。
それでは、なぜ今、学力向上かということでございますが、この学力には、漢字が書けるあるいは書けない、あるいは分数や少数の計算ができる、できない、あるいは社会の歴史の知識があるとかないとか、数値化できる学力が一つございます。それから、問題解決する能力あるいは論理的な思考、コミュニケーション能力など、数値化しにくい学力もあるわけで、文部科学省の方は、この両方の学力をもって確かな学力を育成したいというふうに考えているわけですが、一方、小学校の保護者を対象とした調査によりますと、学校で必要な教科・領域は国語、算数、道徳であるというふうになっております。これは社会生活を営むための読み、書き、計算及び人としての生き方、心の問題を扱うということが重要ではないかというような保護者の考えがございます。
また一方、国際教育の到達度の評価学会の平成11年度に実施しました「国際数学・理科教育調査」などにつきましては、国際的なレベルの中では日本の学力は数値的にはございますが、平成13年度に実施しました経済協力開発機構の「生徒の学習到達度調査」や、昨年実施しました文部科学省の「教育課程学習状況調査」などを見ますと、確かに過去の調査からは知識量などについては低下をしていると。そして、世界的な状況を見ますと、みずから学ぶ意欲という、学習する意欲や学ぶ力というものが非常に不足している。両面、知識量と、それから学習する意欲や学ぶ力が不足している。ここで改めてこの学習指導要領を充実するために、このアクションプランの中で、生きる力をはぐくむ、そのために今年度アクションプランが出されたものと考えております。以上でございます。
三宅隆介
長々とありがとうございました。要は、これは方向転換だと思うんですよね。やっぱり非を認めず、理屈や理念を変えてごまかすのはよくないですよね。それで、子どもたちの学ぶ意欲の低下とか好奇心の希薄さというのはもう明らかですし、教育委員会にぜひお願いしたいのは、こうした政策転換といいますか、方向転換するときは、まずしっかりと非を認めた上で、やっぱり方向指示器をきちんと出さなくてはいけないと思うんですよ。方向指示器も出さないでころころ変更するのは、これは暴走族と一緒で、左を走っていたと思ったら急に右を走ったり、左に曲がるのかと思ったら急に右に曲がったり――だって、そうですよね。学力低下なんていうのはあり得ないと言っていたのが、急に学力向上アクションプランだと言ってみたり、ゆとり教育だと言っていたのが、今度は生きる力だと言ってみたりね。(「三宅さん、国に言わなければ、国に」と呼ぶ者あり)あなたに質問しているわけじゃないから。
要は、教育委員会というのは国に言われたことをそのままやっているわけだから、やっぱりそれが間違っていると思えば、国にしっかりと交渉しなければだめじゃないですか、そう言うのであればね。支離滅裂というか、朝令暮改というか、右往左往するような、一貫性を感じられない教育行政というのはよくないと思います。
結局、公立学校がしっかりとその機能を果たしていないから、今や学習塾が1兆円産業になりました。塾がいいとか悪いとか言っているわけじゃありませんで、前回の一般質問で私が申し上げましたように、公立学校では生徒1人当たり大体80万円ぐらいの税金がかかっていると。これは当然、国と地方を含めて負担しているわけですけれども、それとは別に、1兆円の教育費を国民はつぎ込んでいると。こうした高い教育コストが、結局は少子化を助長している面もまたあると思うんですね。ぜひそうした認識もひとつ持っていただきたいと思います。
次に、教育プラン策定委員会と教員の資質向上に関する検討委員会についてお尋ねをさせていただきたいと思います。いろいろ議論する、検討するのはいいことだと思うんですけれども、何か事あるごとにこうした予算をつけて、垣根をおつくりになるわけだけれども、こうしたものをつくられて、いい結論というのは出ないものなんでしょうかね。しかも、委員の選定を拝見させていただきましたけれども、この選定基準がよくわかりません。毎度おなじみの学識経験者がほとんどなんですけれども、これは、例えばベンチャー企業で成功した人とか、スポーツ選手でもいいと思いますし、あるいは一流レストランのシェフだって僕はいいと思うんですよ。とにかくその道をきわめた人を、こういう中に入れていくことが必要だと思いまして、やっぱり学識経験者ばかりでは、幾ら検討しても旧来の発想しか出てこないんじゃないかと思うんですけれども、教育長の見解を伺いたいと思います。
教育長(河野和子)
教員の資質向上に関する検討委員会のメンバーや、また教育プランに関するメンバーでございますが、今お話のございましたように、さまざまな角度から御意見を伺うことが大切であると考えまして、学識経験者や教職員、また、行政職員などで構成しております。専門的な分野からということで学識経験者、また、現場の声がよくわかるということで教職員と、そういうふうにバランスよく配置したつもりでございますが、お話のございますように、斬新な御意見、あるいはたくましい行動を持った新しい分野の企業等の経営者など、さまざまな分野で御活躍されている方々を選任することは大変重要なことと考えておりますので、今後、検討させていただきたいというふうに思っております。以上でございます。
三宅隆介
大切なのは、若輩の私が申し上げるのも大変恐縮ですけれども、学識経験が大事じゃなくて、やっぱり社会経験が大事だと思うんですね。やっぱり学識経験者以外にもすばらしい有識者はたくさんいるわけでありますから、ぜひとも今後、そうした人選をしていただきたいと思うわけでございます。
それから、教員の資質向上に関する検討委員会についてなんですけれども、これは指導力に欠けている教員を見つけて更生させていくという計画だと思うんですが、現場の校長さんがまず一義的にその先生を評価して、査定をして、この検討委員会に上げてくるということになろうかと思うんですけれども、およそ新しいことをしようとか、前向きに何か変えようという人は、大概上の人から煙たがられるものでございまして、こうしたことを考えると、一生懸命やっている先生が校長先生に、あのやろう、おもしろくないからなんていって不当な評価を受けるような、こんなことというのはあり得ないんでしょうかね。
教育長(河野和子)
本来指導力のある教員が不当な評価を受ける可能性についての御質問でございますが、指導力が不足している教員につきましては、定義といたしましては、指導力向上のための研修や指導助言を受けてもなお授業が成立しない、児童生徒指導が適切に行えないなど、学校教育における責任が果たせない教員、というふうに定義をとらえております。その認定でございますが、校長が指導力不足と思われる教員を教育委員会に申請する際には、校長だけではなく、校内委員会において複数の者がその当否を検討することとなっております。また、校長から申請のあった教員に対しましては、教育委員会が審査会を設け、その判定に基づき、指導力不足教員に該当するか否かについて決定することとなっております。
また、現在の教員像でございますが、教員採用選考におきましては、現在、受験者に自己申告書を提出させることにしておりまして、自分の得意分野、独創性としての自己アピール、一芸に秀でた点などを主張させて、教育委員会としましても受験生の個性を尊重する評価に努めているところでございます。以上でございます。
三宅隆介
ほかにもお聞きしたいことがたくさんあったんですけれども、時間の関係上、割愛させていただいて、たまには教育委員長にお尋ねしてみたいと思うんですけれども、端的にお尋ねします。現在の公教育には改革が必要と思われるんですけれども、教育委員長自身は基本的に改革が必要だと思われているのか、いや、そうじゃないんだと、現状維持でいいんだと思われているのか、お聞かせいただきたいんですけれども。
教育委員会委員長(黒田俊夫)
公教育の改革の必要性についての御質問でございますが、本市におきましても、産業・就業構造の変質、少子高齢化、国際化、地方分権の推進などの大きな時代の変化の中で、価値観の多様化とモラルの低下、学力の低下、不登校などの今日的な課題を抱えている状況がございます。そのような大きな流れの中で、教育改革につきましては喫緊の課題であると認識しておりまして、今年度、かわさき教育プラン策定委員会を設置し、検討を進めているところでございます。教育委員会といたしましては、これまでの川崎の公教育が積み重ねてきた取り組みの中で、さらに発展させていくべきもの、また、見直さなければならないものの見きわめをしっかりとしてまいりたいと考えております。以上でございます。
三宅隆介
時間がございませんので、あと要望を申し上げさせていただきたいんですけれども、やはり改革というのは必要だと思うんです。イギリスの格言に、3回中身を変えて変わらなければ仕組みを変えろ、という格言がございまして、英語で言えというと言えないんですけれども、結局、今の学校教育を支えている仕組みは何かといいますと、一つには学区制という仕組みがあると思うんです。これは前回の質問でもお話しさせていただいたんですが、学区制ができたのは昭和16年の国民学校令からなんですけれども、この国民学校令というのはまさにドイツのナチスがつくったフォルクス・シューレであり――ちなみに、林間学校とかこういうものをつくったのもワンダーフォーゲルというナチスの知恵なんですけれども――こうした他国で使われた制度を昭和16年以来ずっと使っていると。確かに戦後、経済状況がまだよくないころ、学区自由化にしても、施設の不足から恐らく混乱が生じたと思うんですけれども、もはや時代背景はもう完全に変わりまして、学区自由化しても大分柔軟に対応できる時代になってきたと思うんですね。やっぱり学区というものをもう一回考え直して、それぞれの学校が、それぞれの教員が競い合う、こうした新しい仕組みをつくっていただきたいということを要望させていただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。