昨日のブログにひきつづき、インチキレトリックについて述べます。
まず、以下の主張をお読みください。
「政権交代後、GDP(国内総生産)成長率はプラス基調に転じています。2015年度の実質GDPは12年度に比べて2%増加し、10兆円増の529兆円に上っています。一方、名目GDP(15年度)は500.3兆円に達し、12年度から約26兆円の増加を記録。名目GDPが500兆円を超えたのは、リーマン・ショックに見舞われる前の07年度以来、8年ぶりで、経済再生が着実に進んでいることは明らかです」
(『公明新聞ニュース』より)
・・・以上は、政権与党たる公明党さんの主張です。
「実質GDPはプラス基調?」
「12年度に比べて○○%の増加?」
「名目が500兆円を超えた?」
例によってピンポイントで数字を強調するレトリックです。
まず、プラス基調というと、いかにも右肩上がり的な響きですね。ほんとにそうですか?
12年度に比べて増えている・・・数字は細分化して時系列でみなければ。
名目GDPが増えたのは、“円安”という物差しが変わった形で名目の輸出額が増えた結果ですね。名目GDPが500兆円を超えても実質GDPを下回っていたら、それをデフレといいます。
このように一つ一つ冷静にみていくと、インチキレトリックというメッキは簡単に剥がれていきます。
上のグラフは、実質GDPを四半期ごとの増加率でみたものです。
果たしてプラス基調と言えるかどうか。よく言って、一進一退というところではないでしょうか。
2013年度は確かにプラス基調かもしれないですけど、一転して2014年度はマイナス基調です。2014年の第二四半期と第三四半期は連続してマイナスでしたので、明らかなリセッション(景気後退)です。むろん、消費税増税(5%→8%)の影響ですが。
一方、実質GDPをミクロの統計でみたものが実質賃金です。実質賃金が恒常的に増えていく状態を「経済成長」と言います。その実質賃金は昨日も指摘しましたとおり、アベノミクス以降、5年連続でマイナスです。あの・・・あの・・・あの民主党政権時代よりも酷い数値なのでございます。
次に名目GDPの各需要項目の増加率を時系列(四半期)でみてみます。
黒田日銀の量的緩和が円安をもたらし、確かに名目の輸出額(グラフの赤い線)が増えたのは事実です。が、その効果も今や薄れ、もはや右肩下がりですね。というか、各需要項目が全体的に右肩下がりです。
くどいようですが、名目GDPが実質GDPを下回っている状態はデフレです。
要するに、どんなに四の五の言ったところで、そもそもデフレを脱却していないこと自体が大問題なのです。
ではなぜ、デフレを脱却できないの?
デフレ脱却のための正しい政策をうっていないからです。
なのに・・・「名目GDPは500兆円を超えたんですよ、国民の皆さん」とやりやがります。
巧言は人心を惑わし、世を乱します。
ところで現在の日本に、正しいデフレ対策を主張している政党なんてありましたっけ?