米国の中央銀行(FRB)議長のイエレンさんも、さぞかしお悩みのことと存じます。
近い将来、やがて米国を襲うであろうリセッション(景気後退)の前に、わずかでも手持ちの駒(景気を刺激するための低金利政策)を確保しておきたいFRBとしては、できうるかぎり金利を引き上げておきたいところなのでしょうが、それを許す経済環境がなかなか整いません。
『米経済、警戒すべき4つのリスク
http://jp.wsj.com/articles/SB11520750371802253976804582119862826706798
米国が1年以内にリセッション(景気後退)入りする可能性について、多くのエコノミストは無視できるほど小さいものではないと考えている(後略)』
『つまずいたFRB 市場の目は日銀に
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO03503580R10C16A6K14800/
5月の米雇用統計が市場予想を大幅に下回り、FRBのイエレン議長は月内の利上げ見送りを示唆した。利上げ再開が遅れれば円高・株安が進みやすくなるおそれがあり、市場は警戒を強めている。日銀は追加緩和のカードをいつ切るのか。世界経済のリスクをにらみ難しい対応を迫られている。(後略)』
米国の消費者物価指数の直近月次データをみますと、
昨年以降、回復の兆しは見られますが、依然として2%には及ばず、むしろ今年に入って下降基調です。
日本と同様に、米国もまた需要不足なのです。
実質金利=名目金利-期待インフレ率
・・・だから、期待インフレ率を上げれば投資が増えて需要不足が埋まる、といういわゆる「期待インフレ率理論」はもはや失敗に終わっています。
上記、日本経済新聞は「市場の目は日銀に…」となっていますが、日銀だってそんなに期待されても困るでしょうに。日銀には金融政策を行う権限と能力があっても、財政政策を行うそれはないのですから。
「とにかく更なる金融緩和で円安を維持しろ(株価を下支えしろ)、それが世界経済のリスク回避への一助だ」とこの新聞は言いたいのでしょう。
いま足りないのは金融政策というより財政政策(財政出動)である、という真理になかなか迫れない新聞です。