本日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が閉幕します。
昨日の会議で安倍首相が、このままでは「リーマン・ショック級の危機が発生しかねない」と危機を煽り、各国首脳から顰蹙を買ったとのことです。
『首相「リーマン前に似る」 危機認識、首脳間にズレも
伊勢志摩サミット、消費増税延期へ地ならし
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO02843290X20C16A5EA2000/?dg=1
安倍晋三首相は26日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、世界経済について「危機に陥るリスクがある」と訴えた。政策対応を誤ればリーマン・ショック級の経済危機が発生しかねないとして各国に財政出動を促したが、認識は必ずしも一致しなかった。首相の強い訴えには、2017年4月に予定する消費増税を再延期する地ならしの思惑が透ける。(後略)』
総理としては来年4月の再増税延期と、財政出動の必要性に充分なる根拠・裏付けをもたせたいがための発言であったろうと思います。
ここまでくると苦笑するしかないのですが、別にそんなことを言わなくとも、ふつうに「世界的デフレを克服するために、各国が協調して財政出動しましょう」と言えばよかったのです。
もし、「何故だ?」
と、訊かれたら、「だってスティグリッツもクルーグマンもそう言ってたもん」って言えばいい。
そのために、スティグリッツ教授やクルーグマン教授を呼んだんじゃないんかいっ!
と、とりあえず突っ込みを入れておきます。でも、安倍総理の財政出動への意気込みはわかりました。これで来年4月の消費税再増税の延期も決まったも同然ですね。
総理の「リーマン・ショック級」発言は、むろん個人的なお考えで発言されたのではなく、総理にそのように言わしめた○○官僚らがいたはずです。我が国の首相を国際会議において辱めた。結果、我が国を辱めた、という点でまことに罪深いことだと思います。
リーマン・ショックとは米国の不動産バブルの崩壊でした。バブルの崩壊はバブルの後に発生します。あたりまえですよね。
しかし現状の世界経済をみると、実体経済はむしろデフレで、金融経済もさしてバブっていませんし、どこかの国で不動産バブルが起きつつありましたっけ?
米国FRBのQE終了と利上げによって、たしかに米国の金融市場にマネーが回帰しましたが、バブルほどの勢いではないですよね。むしろそのために新興国の実体経済が低迷し、あわせて中国需要が極端に落ち込んだことから世界的なデフレ状態です。
この状況下で「リーマン・ショックがぁ」と言われても、「はぁ?」と言いたくなる各国首脳たちの気持ちもわかります。
ただ、リーマン・ショック級とはいかないまでも、米国が秋以降(大統領選挙以降)にリセッション(景気後退)に突入する可能性は充分にあります。
上のグラフのとおり、米国経済の成長率の推移をみると、米国の景気循環に一定の周期があります。よって、今年の秋以降からリセッションに突入する可能性は充分にあります。(リーマン・ショックとは違うかたちで)
であるからこそ、FRBは米国経済がリセッションに突入する前に、少しでも金利を引き上げておきたいのでしょう。むろん、次の後退局面で金利を引き下げる余地を残しておきたいからです。
中国の成長神話が崩壊し、資源国や新興国経済も停滞しています。そして日欧がデフレ状態にあるなか、さらに米国までもがリセッションに突入すれば、まさに世界経済の危機です。
だからこそ今、主要国が協調してデフレ解消のための財政出動を行わなければならない。消費税増税などはもってのほかなんです・・・
と、安倍総理は言えばよかったのではないでしょうか。
話は変わりますが、本日5月27日は海軍記念日です。明治38(1905)年の今日、日本海海戦において我が帝国海軍はロシアのバルチック艦隊を悉く沈めました。
この記念すべき日に、オバマが広島を訪問します。たまたま日が重なったのか、あえてなのか!?
いずれにしても、訪問したところで決して謝罪などしないでしょうが、今回の「米国大統領の広島訪問」をどのようにして我が国の戦後脱却につなげていくのかが重要です。