2007年10月に日本郵政公社が民営化され、持ち株会社である日本郵政株式会社と、その下に日本郵便(正式には郵便事業株式会社)、郵便局、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の4つの株式会社が発足しました。
詳細を論じると膨大な文字数になってしまいますので、誤解を怖れず超おおざっぱにザックリと以下述べます。
郵政民営化は外圧(米国)の要請に応えるかたちで進められました。むろん米国側の目的は、郵貯や簡保市場の莫大な資金。これらを金融庁規制下にある一般の金融機関や生損保事業者とイコールフッティングさせ、彼らの市場として取り込むことでした。
結果、もののみごとに全国の郵便局の窓口でアフラックのがん保険が販売されています。
郵貯、簡保が郵便事業から切り離されたことにより、郵便事業については今後、日本国民による税負担が待ち受けています。
郵貯、簡保は株式会社化されても採算性を維持していけるでしょう。しかし、全国一律にユニバーサルサービスを安価で展開しなければならない郵便事業は間違いなく赤字ですから。
その郵便事業の赤字を、それまで(民営化前まで)は郵貯、簡保の黒字によって賄い安定的な国民サービスを提供してきました。それが郵政三事業でした。
なのに、郵政民営化の名のもとに郵政三事業は解体され、その赤字部分を新たな国民負担で賄う。ということは、国民が負担した分がそのまま民営化によって新規参入してくる金融機関らに吸いとられるという話です。
それと同じことが農協改革という名の「農協解体」によって行われようとしています。
郵政三事業と同じように、農協にも三事業があります。①JA全農(商社業) ②農林中金(銀行業) ③JA共済(保険業) の三つです。※( )内はザックリ言うと…です。
これもまた郵政に似ているのですが、農協についても全農は赤字、農林中金とJA共済が黒字です。
要するに全農の赤字を、農林中金やJA共済の黒字で賄うことによって、安定した国民サービスを提供してきたのです。
「全農が赤字だからけしからん」と言う人がいたら、よほどの無知かバカです。全農が赤字だからこそ、私ども日本国民は安くて安全な食物を購入することができるのです。それに、もし全農がなかったら、各農家は個別に民間流通事業者と契約しなければなりません。そうなったら、間違いなく大手流通業者の言い値ですね。
さらに全農は100%子会社の全農グレインを通じて、アメリカから輸入される穀物をIPハンドリングという入念な生産流通管理を行うことにより、日本の食料安全保障をも担っています。
もし全農グレインがなかったら、私たち日本人は大量無差別に輸入されてくるカーギル等の遺伝子組み換え穀物を不本意・無抵抗のままに食すことになっているでしょう。
カーギルは、この全農グレインが邪魔で邪魔でしょうがないようで、できれば買収したいようです。
ところが、親会社の全農が株式会社でないために買収できません。だからこそ彼らは協同組合であるJA全農を株式会社化(民営化)してほしいのです。米国側はあからさまにこのことを日本政府に要求しています。
その期待に応えようとしているのが、真意を知らずに農協改革を叫んでいるおめでたい国会議員たちです。
その代表的な人物が、彼の有名な小泉進次郎代議士です。
『農協改革 次は「流通」 小泉氏「徹底的にやる」
http://mainichi.jp/articles/20160503/ddm/008/020/121000c
高い農薬価格 地域間で差
「同じ農薬なのに、農協によってこんなに価格差がある」。3月30日、自民党本部7階の一室で、農林部会長を務める小泉進次郎(35)の声が響いた。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)発効を見据え、農業対策を議論するプロジェクトチーム(PT)の会合。配布資料には、東北、北陸の地域農協で扱う農薬の販売価格が並ぶ。農協によって価格はさまざまだ。144種類の農薬の半分以上で、最高値と最安値の差が2割を超えていた。小泉は、農薬や肥料、農機などの価格の全国調査を農林水産省に求めた。(後略)』
一方で彼は、
「農林中金の貸し出し残高のうち農業に回っているのは0.1%。だとしたら要らない」
と言ってます。
要するに、農林中金が存在することの意味を全く理解されていないようです。氏はひょっとすると、全農グレインの存在すら知らないのではないでしょうか。
しかも下のグラフのとおり、日本の食料安全保障は占領統治以来、未だ盤石な状況にありません。
このような状況下で農協を解体することの意味をどこまで理解しているのでしょうか。
小泉進次郎氏ら新自由主義者たちの共通点は、有事(緊急事態)をまったく想定していないことです。
ですので彼らは平気で、
「自給率なんて低くてもいいじゃん、自由貿易さえあれば食料なんて常に輸入できるんだから」
とか言います。
でも、それって平時の話でしょ。有事のときはどうするの?
特に「穀物」は、主権国家にとって戦略物資のひとつなんですよ、小泉さん!
親父は郵政を壊し、息子は農協を壊す。
この〇〇親子二人に、絶対に日本を壊させない!