去る4月28日の金融政策決定会合では、巷の予想に反して追加緩和は見送られました。とりあえず、これ以上の量的緩和もマイナス金利の拡大も不可能である、と判断されたようです。
『物価2%上昇、「17年度中」に先送り…日銀
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160428-OYT1T50130.html
日本銀行は28日の金融政策決定会合で、現在の金融政策を維持し、市場が期待していた追加緩和策の導入を見送った。(後略)』
それもそのはずですね。
政府が頑なに国債発行を抑制していますので、買い取る国債自体が市場から枯渇してしまっています。それに、これ以上マイナス金利を拡大すれば金融機関の収益が更に圧迫され、そのしわよせが預金者負担にまで及び、かえってデフレ圧力になってしまいます。
いわゆる〇〇証券会社の〇〇エコノミストたちが「市場は更なる緩和を期待してます」とか言ってましたが、上記のことを考慮すれば、そもそも期待する方がおかしい。結局、この種の人たちは何も解っちゃいないんですね。
しかも、日銀は目標としていた“2%の物価上昇率”も棚上げにするとのこと。あれほどコミットメントだ、と言ってたのに・・・。
コミットメントは責任を伴う宣言です。なのに、誰も責任をとらない。
一方、日銀の追加緩和見送りによってNY市場で円高が進んでいるとのことです。
『円高加速し一時106.45円、日銀緩和見送りの余波続く=NY外為市場
http://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN0XQ2KQ
ニューヨーク外為市場では、ドルが対円で1年半ぶりの安値を更新した。週間では2008年の金融危機時以来の大幅下落となる見通し。日銀が追加緩和を見送った影響が続いている。(後略)』
そんな折、アメリカからは「日本は通貨を意図的に安くしているのでは?」と疑念を持たれているとか。
むろん政府や日銀は、「デフレ対策として金融緩和を行っているだけ」と言い張るでしょうけど。
黒田緩和以降、円安基調が続いてきましたが、そもそもからして円高の基本的な要因はデフレでしょうに。適切なデフレ対策をうたず、金融緩和だけしかやっていないことが、アメリカにして「日本は意図的に為替を安くしている」と言わしめる結果に至っているのではないでしょうか。
不足している総需要を充たすための財政出動を行えばいいだけなのに。
一定規模、そして一定期間の財政出動(需要創造)を行えば、必ず名目GDPが拡大します。名目GDPが拡大すれば、必ず税収が増えます。税収が増えれば、必ず政府負債の対GDP比率が低下します。
政府負債の対GDP比率の低下のことを、正しい意味での「財政再建」といいます。
現在のようなデフレ期に名目GDPが1%成長すると、税収も必ず〇〇%増えます。それを税収弾性値といいます。現在、日本の税収弾性値は3~4といわれています。
即ち、GDPが名目(物価上昇分を含む)で1%成長すれば税収が3~4%増えます。現在の国の税収は約40兆円ですので、1.2~1.6兆円の税収が増えることになります。
たった1%の名目成長でこれだけの税収が増えるのですから、2~3%成長した場合の増収効果は更に大きい。
例えば、税収弾性値が3、名目成長率が3%で計算すると、3.6兆円の増収になります。この一点をもって、消費税を増税する必要など全くないことがわかります。
因みに、税収弾性値は逆バネも働きます。名目GDPがマイナスになると税収も減少します。
要するに・・・
名目GDPの減少 = 税収の減少
名目GDPの減少 = デフレ
税収減少の最大の要因はデフレなのです。
また、デフレを克服すれば自然な形で円安に向かうでしょう。