今回の熊本・大分地震では、震災後の復旧拠点となるべき行政庁舎のいくつかが倒壊してしまいました。
そのため、ただでさえ難儀な被災生活を強いられている皆さんは、たった一通の罹災証明書を取得するのにも大変な苦労をされているようです。
これらの行政庁舎は次々に襲いかかる余震や、再び来るかもしれない大震災に対する防災拠点にもなるわけですが、報道によると、各自治体における、いわゆる「財政問題」がネックとなり、庁舎の立て直しは棚上げされ、耐震強化すらも充分に行うことができなかったようです。
一方、南海トラフ巨大地震や首都直下型地震の可能性がいよいよ高まりつつあるとも言われています。未だ耐震性を有していない行政庁舎は、熊本・大分のみならず全国的な問題として早急に対処すべきです。
「デモゥ、ザイセイガァ~」というのであれば、例えば各自治体が「震災対策地方債」を発行して、それを日銀が引き受ければいいだけの話です。日銀は日本政府の子会社ですので、地方自治体に実質的な返済義務はありません。
どうしても日銀に返済したい自治体があればすればいい。日銀は返済されたおカネを国庫納付金として政府に収めるだけです。結局、地方自治体の財源が政府に移るだけの話で、いわば逆交付税ですね。
何を言いたいのかというと、政府や自治体や中央銀行というのは、国民の為にそういうことができる存在である、ということです。
耐震性の強化が求められているのは、何も行政庁舎だけではありません。
学校、体育館、病院、劇場などなど、多くの人たちが利用する施設もそうであり、火薬類、石油類などの危険物を一定の数量以上貯蔵又は処理する建築物もしかりです。
例えば川崎市内のそうした施設の耐震性状況を調べてみると、次のグラフのとおりです。
多数利用とは、学校、体育館、病院、劇場などなどの多数の人が利用する用途であって、一定規模以上の建築物のことです。
危険物とは、火薬類、石油類などの危険物を一定の数量以上貯蔵又は処理する建築物のことです。
このように川崎市だけをみても、行政庁舎のみならず、病院(学校は耐震化済み)や危険物を取り扱う施設等についても耐震性を強化すべき施設が残っています。
こうした国民の防災安全保障にかかわる問題が、在りもしない“財政問題”がことごとくネックとなり遅々として進まないのは誠に残念です。
先日も述べましたが、2005年にアメリカ南東部を襲った大型ハリケーン・カトリーナでは、約10兆円の被害と1800人以上にも及ぶ死者がでました。
事前に2000億円の防災投資を行っていれば、被害総額ゼロ、死者ゼロだった、という米国政府(合衆国連邦緊急事態管理庁)の調査報告もあります。
私たち日本国民は、政府や行政の役割について今一度考えなおすべきです。