アベノミクスの政策目標は、デフレ脱却でした。
その手段として、
①金融政策(量的緩和)
②需要創出(財政出動)
③成長戦略(生産性向上のための投資)
という素晴らしい三本の矢を提示されました。なぜ素晴らしいのかというと、この3つは適切なデフレ対策だったからです。
ところが、ところが・・・
いつの間にか、この3本の矢のうち2本の矢がとんでもない方向に飛んでいくことになりました。
①については、黒田日銀が適切にその期待に応えました。
市場から国債を購入することによりマネーストック(日銀当座預金残高)を拡大しました。昨年9月末時点で日銀の保有国債(財投債、国庫短期証券を含む)残高は、315兆円。日銀当座預金は、220兆円増えて本年4月現在で280兆円です。
驚いたことに、アベノミクスはここで終了しました。
②の財政出動は、2013年だけは実施しましたが、その後またもや緊縮財政に逆戻り。
③の成長戦略は、いつのまにか新古典派経済学(グローバリズム)が求める構造改革にすり替わりました。
アベノミクスはたった一年で死んだのです。
いうまでもなく、民需が弱く企業の資金需要も乏しいデフレ期には、政府がカネを借りて使わなければなりません。何に使うのかというと、成長戦略(生産性向上と国土強靭化)のための投資や支出です。
なのに、頑なに緊縮財政と構造改革を断行しているので、インフレ率は目標の2%に遠く及ばず、それどころか直近でマイナスです。実質消費も直近の数値が前年比マイナス5.3%という有様です。
くどいようですが、構造改革ってインフレ対策ですから。。。デフレ期にやったら余計にデフレになるだけです。
デフレの長期化が国民の所得や消費を減らし税収不足を招いています。政府の負債残高が増えた理由はこの一点にあります。
「公共事業のやり過ぎで財政が悪化した」は、構造改革と消費税増税を成し遂げたい連中のプロパガンダです。
以上のことを踏まえつつ、以下の読売新聞の記事を読んでみてください。
『株安・円高、自民・菅原氏と民進・玉木氏ら議論
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160512-OYT1T50187.html?from=ytop_main4
自民党の菅原一秀衆院議員と民進党の玉木雄一郎衆院議員らが12日夜、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、金融市場で進む株安と円高などについて議論した。
菅原氏は株安の原因として原油価格の下落や、中国経済の停滞、米国雇用の減少など、国外の要因を指摘し、「政府として経済政策アベノミクスをしっかりうつことが大事だ」と強調した。一方、玉木氏は「株価と同時にアベノミクスに対する期待が失われている。かなり限界に近づいている」と指摘した。』
記事を読む限り、自民党の議員も民進党の議員もともに、アベノミクスが既に変質していることも、そして今やアベノミクスがデフレ化の元凶であることも知らないようです。
与党はともかく、この民進党の議員の発言も意味不明です。
記事には、
・・・玉木氏は「株価と同時にアベノミクスに対する期待が失われている。かなり限界に近づいている」と指摘した・・・
とあります。
株価と同時にアベノミクスに対する期待って、いったい誰からの期待のことを言っているんでしょうか。そもそもデフレ化を進めるアベノミクスに期待されても困るんですけど。
それに日本の株式市場の約7割は、構造改革を求める外国人投資家らによって動かされています。もっと彼らの期待に応えろ、とでも言うのか。
せっかく党名を変えても支持率が上がらないのは、この程度のお粗末な反論しかできないからではないでしょうか。
「かなり限界に近づいている・・・」
ひょっとしたら自分の国会議員としての資質も限界に近づいていないか、一度確認したほうがいい。