この世には御用学者と呼ばれている人たちがいます。
典型的なのが彼の有名な伊藤元重氏でしょうか。学習院大学国際社会科学部教授の肩書で、総理を議長とする経済財政諮問会議にも名を連ねて安倍政権の経済政策に大きな影響を与えています。
氏は、新古典派経済学に基づく緊縮財政や構造改革、及びグローバル投資家らが求めている法人税減税と消費税増税を盛んに唱えています。因みに安倍政権の経済政策の結果はご承知のとおりです。
もう一人、TVの経済番組等に頻繁に登場するのが同じ苗字の伊藤隆敏氏(コロンビア大学教授)。
今朝も某テレビ番組で、更なる消費税増税の必要性を性懲りもなく訴えていました。
今やスティグリッツやクルーグマンですら消費税の増税延期を提唱しているなかで、いったいどの面下げてのこのこと出てきたのかと思いきや、「税収の上振れ分を若者世代に分配すれば個人消費は落ち込むことなく増税は可能」とのことでした。
税収の上振れ分と言ったのか、それとも消費増税による増収分と言ったのか、よく聞き取れなかったのですが、いずれにしても説得力のある提言ではありませんでした。
もし税収の上振れ分ということであれば、それは黒田緩和(円安)で企業収益が増えたことによる税収増のことを指しているのだと思われます。とすれば円高基調になりつつある今後には期待できない財源ということになります。
一方、消費増税による税収増をあてる、という意味であるのなら、更に疑問です。だったら最初から減税してあげればいいのでは?
減税すれば消費性向は上がります。増税すれば消費性向は下がるのですから。
増税したら消費が落ち込むことは統計的に明らかです。よって、むしろ消費税を8%から5%に減税すべきです。減税により個人消費が増えてGDPが成長すれば税収増になりますから。それが常道だと思うのですが・・・
そもそも若者へ分配すれば消費が増える、のプロセスがよくわかりません。それに若者って何歳から何歳の人? 分配って一律ですか、それとも年収別に差をつけるのですか、年齢別に差をつけるのですか? その場合、それぞれの消費性向はどのくらいと推定しているのですか?
学者のくせに、提言がザックリとし過ぎてよくわかりません。
2014年4月に消費税を増税した際、増税推進派らは一旦は消費が落ち込んでも必ずV字に回復するはずだ、と言っていました。
さらに4月28日に総務省から発表された消費支出をみると、下の表のとおり未だ惨憺たる結果です。
5月18日には、2016年1-3月期のGDP速報値が発表されます。
くどいようですが、おそらくマイナスです。とすると、2014年度、2015年度と2年度連続でのマイナス成長が確定です。2年度連続のマイナス成長は、憲政史上、安倍内閣が初めてのことになります。
仄聞するところによると、安倍総理は増税を指南した連中に怒り心頭とのことです。「あの時オレに、増税しても大丈夫だと言ったじゃないかっ!」と言ったかどうか。
御用学者が御用済み学者とならないように祈っています。