安倍総理が、ようやく財政出動の必要性を認識しはじめたようです。
日独共同記者会見でも以下のように発言されました。
「G7には構造改革の加速化に合わせて機動的な財政出動が求められており、伊勢志摩サミットでG7として一段と強い、明確なメッセージを発出したいと考えていることをお伝えしました」
(5月4日---日独共同記者会見)
構造改革の加速化・・・という件(くだり)は相変わらずですが、少なくとも財政出動が求められていることについては認識されたようです。
それでも「構造改革は必要」と言い切っているあたり、経済の本質的な部分についてはあまり理解されていないのでしょう。
来る5月18日(水曜日)には1-3月期のGDP速報値が発表されます。おそらくかなりの確率でマイナスです。1-3月期のマイナス成長が確定すると、二年度連続のマイナス成長という憲政史上類例のない失政となります。
それは財務省の言いなりになって頑なに緊縮財政を行ってきたことの報いなのでしょうが、総理の名誉はともかく、この長引くデフレにより、アベノミクス(橋本内閣以降の歴代政権を含む)がどれだけの日本国民を貧しくしてきたのか、痛切に政治責任を感じてもらいたいものです。
1-3月期がマイナスになる公算が高いからこそ、安倍総理は財政出動の必要性を言い出したのかもしれません。
むろん、デフレの長期化は地方自治行政にも深刻な影響を与えています。
例えば私は、3月に開催された予算議会においても、川崎市財政局が示している収支フレームについて質問したところです。
当局が示している収支フレームは、内閣府が策定した各経済指標を前提として試算されています。
その内閣府は、①経済再生ケースと②ベースラインケースの二つのパターンを想定していますが、例えば、低めに見積もっている②のベースラインケースのCPI(消費者物価指数)の上昇率をみてみると下のグラフのとおりです。
2017年度の2%を除くと、今年度(2016年度)以降、1.2%の物価上昇率を前提にしています。
本来、エネルギーや食料品を除いたコアコアCPIで見るべきなのですが、内閣府がエネルギーや食料品などを含む総合消費者物価指数で算出していますので、やむをえずここではその数値を踏襲します。
なぜ、物価上昇率にこだわるのかというと・・・
景気がよくなってモノやサービスが売れると、自然なかたちで物価が上昇するからです。物価が上がらないままに景気をよくすることは不可能ですから。
自然なかたちで・・・といったのは、不自然なかたちで物価が上昇する場合もあるからです。例えば不景気でモノやサービスが売れなくても、増税するだけで消費者物価は上昇します。
我が国は、1997年に当時の橋本内閣が消費税を5%に引き上げ、それと同時に同内閣が緊縮財政へと舵をきったことによりデフレに突入しました。
そこで、1997年以降の消費者物価指数(総合)の推移をみると下のグラフのとおりです。
ご覧のとおり、デフレ下では物価の上昇を期待するのは不可能です。ていうか、そもそも物価が上昇しないからデフレなのですが・・・
2008年の物価上昇は米国の住宅バブルによって輸出が増え、その結果として名目GDPが増えたことによるものです。国内は依然としてデフレでした。
1997年と2014年に上昇しているのは、先述のとおり消費税を増税したことによる影響です。それぞれ増税分の2%を引かなければなりません。
以上のように、デフレ下では、内閣府試算のベースラインケースが想定する1.2%の物価上昇を維持することは絶対といっていいほど不可能です。
デフレ克服の目途が立たない現況の中で、内閣府試算の経済指標のもとにお花畑な収支フレームを策定することのそら虚しさを感じているのは私だけでしょうか。
日本国民としても川崎市民としても、デフレは他人ごとではありません。
安倍総理が財政出動という正しいデフレ対策を打つのか打たないのかによって、川崎市の収支フレームも大きく変わってくるのです。
ちなみに、構造改革の加速化っていうけど・・・総理、それって物価下落圧力ですよ。