自然災害大国の我が国にとって、防災は国防にならぶ重要な国家安全保障の一つです。
そして日本の防災安全保障を考えたとき、インフラストラクチャーの充実は必須の条件です。
例えば道路。
21世紀に入り、国民の7割以上が都市に住む本格的な都市化社会を迎えた我が国において、道路は都市の基盤となる最も根幹的なインフラストラクチャーです。
道路は、ただ単に人や車が移動するための手段として存在しているわけではありません。都市においては防災、公共公益施設の埋設、日照緑地等の環境形成などの空間機能があり、そのことが宅地開発や都市開発を促進することを可能にしています。要するに道路には土地利用を形成する機能が存分に備わっているわけです。
とりわけ災害時には、被災者の避難および救助のための通路としての機能があり、災害の拡大を抑え遮断するための空間機能もあります。例えば地震で住宅火災が発生したとき、道路という空間がその遮断空間となるわけです。
被災地へ直ちに救援に向かうためには陸路、空路、海路など、様々なアクセス手段があります。しかし最終的には道路基盤の充実が最も重要になります。例え空港や港湾まで物資を運ぶことができても、そこから現地にアクセスするためには道路が必要になるからです。それも一つのルートではなく、複数のルートが存在することがベターです。
これまで・・・、
「狸しか通らないようなところに道路をつくって税金を無駄遣いしている」
とかいう愚かなレトリックで道路整備を否定してきた人たちが政治家を含めて少なからずいますが、こうした有事にこそ複数の救援路をもつことがいかに重要であるのかが解かります。
例えば近い将来、間違いなく首都圏を襲うであろう首都直下型地震の被害を内閣府が想定していますが、そこでは約700万人の避難者が発生するとされています。これは人類史上最大の避難者数です。また帰宅困難者については約650万人にも及ぶとされています。
このとき、交通物流網の充実度がものをいいます。むろん、復旧速度にも大きな差がでます。
そこで、川崎市を含めて、日本の大都市における道路整備状況の一端をみてみます。
下のグラフは、大都市における都市計画道路の整備率です。
我が国には100%を充たしている大都市は一つもありません。それどころか、60%をも充たしていない大都市すらあります。
あまつさえ、我が国には「少子高齢化の日本には、もうこれ以上の道路はいらない」とか言っている○○な議員がいます。
こうした手合いは、道路のもつ多面的な機能、とりわけ災害時における道路の空間機能というものを全く理解していないのでしょう。
さらには、道路網の充実(ネットワーク化)による生産性向上によって、我が国は生産年齢人口の減少を移民を入れることなく克服することが可能であることも知らないのでしょう。