現在、我が国において取り組むべき喫緊の政治課題は、
①熊本地震による被害対策
②日本を発展途上国化しているデフレへの対応
③国民生活を守るための諸制度を破壊している「構造改革」の中止
・・・の3つに集約されるものと考えます。
とりわけ熊本地震による被害対応については、交通インフラをはじめとした生活インフラが徐々に復旧しているものの、被災地復旧はまだまだ緒に就いたばかりです。
一方、一昨日(4月25日)に開催された『経済財政諮問会議』の資料に以下のような記述があります。
『平成28年第7回経済財政諮問会議(資料2)
開催日時:平成28年4月25日(月曜日)17時40分~18時25分 開催場所:官邸4階大会議室
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2016/0425/shiryo_02.pdf
(前略)平成 28 年(2016 年)熊本地震により、極めて甚大な被害が発生し、多くの被災者が 不自由な避難生活を余儀なくされている。被災者の生活への支援等に政府一丸となっ て取り組んでいく必要がある。(中略) 同時に、経済再生と財政健全化の双方を一体として実現することが重要である。昨年閣議決定した「経済・財政再生計画」の初年度の予算となる 28 年度予算を着実に実 施するほか、アクション・プログラムに沿ってワイズ・スペンディングを強化するなど、経済・財政一体改革を引き続き推進していく必要がある。(後略)』
べつに揚げ足をとるつもりはないのですが、「政府一丸となって被災者の生活支援に取り組む」と言う一方で、「それと同時に経済再生と財政健全化の双方を一体として実現することが重要だ」と言っています。
ここでいう「財政健全化」とは、要するに「単年度でのプライマリーバランスの黒字化」と「政府負債の削減」のことを意味しているものと思われます。現に稲田朋美政調会長はその重要性を常に述べておられます。
くどいようですが、そもそも日本にはギリシャのような深刻な財政問題(政府のデフォルト懸念)など存在していません。
ましてや大震災という国家の非常事態(有事)に際して「プライマリーバランス(財政規律)がぁ~」、とか言っているその神経が理解できません。
その稲田先生が、昨年(2015)6月17日に開催されたロイター・ニュースメーカーでのインタビューで次のように語っています。
「2020年度にPB(プライマリーバランス)の黒字化をしておかなければ、金利の急上昇によって日本の財政が破綻状態になり得る」
はぁー?
こういうのを無知といいます。
下のグラフは国のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の推移です。
たしかに赤字が続いています。
ところが・・・長期金利の推移をみると、
ご覧のとおりです。長期金利は上昇するどころか、下降の一途を辿っています。それどころか、いまやマイナスにまでなっています。
あたりまえですよ、デフレなんですから。
デフレで貸し出し先のない国内の金融機関は、預金の運用先として日本国債を購入してきました。もしも稲田先生のいうようなヤバい国債だったら、国内の金融機関は日本国債など買わずに米債などの外債を購入してきたはずです。
要するに、稲田先生のように、日本政府がデフォルト(債務不履行)する可能性があるなんて思っている金融機関は一つもないということです。
稲田先生をはじめ、財政破綻論者たちは、国債暴落と金利上昇へのプロセスを具体的に絶対に説明しようとはしません。というより、できないのです。
そもそもからして、財政出動によりデフレから脱却することができれば、自ずとプライマリーバランスも黒字化に向かいます。
熊本地震による被害対応にしろ、デフレからの脱却にしろ、適切な対応をとるためには一定の財政出動が必要です。もし財政規律を前提としてこれらの対応を進めれば、国家と国民の将来に必ず大きな禍根を残します。
まったく破綻する可能性のない家計(親)が、貯金が減るのを理由に子供の命に係わる治療をケチるような話です。