私たち日本国民の生活と安全の基盤たるインフラストラクチャー。
「日本は人口が減るから、これ以上のインフラ整備は必要ない」というのは大きな誤解です。
先日のブログでは、重要なインフラストラクチャーの一つである「道路」のもつ多面的機能について述べましたが、本日は「港湾」です。
ご承知のとおり、川崎市も海沿い市域2,053.2haの敷地に港湾をもっています。むろん、埋立ててできた港です。川崎市が管理する公共ふ頭と企業が所有する専用ふ頭からなっていますが、川崎港での海上出入貨物量は全国で第6位(平成25年)。大小さまざまな船が1日に平均約70隻ほど入港しています。
通常、港湾のもつ能力は、TEU (Twenty feet Equivalent Unit、20フィートコンテナ換算個数)というコンテナ取扱貨物量を表す単位で比較されます。
例えば、20フィートコンテナ1個を1TEU。、40フィートコンテナ1を2として、コンテナ取扱貨物量をこの数値の合計で表示します。
川崎港の取扱貨物量は全国で6位なのですが、港湾能力は国内レベルで競い合う性質のインフラではありません。国際的な物流ネットワークの中において、どの程度の取り扱い能力をもっているかにかかっています。
残念ながら、我が国の港湾の国際競争力は今や惨憺たる結果になっています。
なんとこれまで、10,000TEU規模の大型船が入港可能な港湾が我が国には一つもありませんでした。まことに恥ずかしいことです。
そのため、10,000TEU規模の大型船は、いったん韓国の釜山港に入港し、そこで貨物を小分けしてから日本の各港に入港してきました。要するに、ハブ港湾を韓国(釜山港)にとられてしまった、ということです。
つい最近になって10,000TEU規模の大型船が入港可能な埠頭が横浜港にやっとできたのですが、いまや大型船の定義が20,000TEU規模になってしまったため、再び大型船が入港可能な港湾が日本国には一つもない、という状況に至っています。
下の図のとおり、世界の港湾別コンテナ取扱数ランキングのベスト10内に、我が国の港湾は一つも入っていません。(2014年速報値)
また港湾は、自然災害等の有事の際には救援物資を中継する重要な災害拠点にもなります。
例えば、日本で南海トラフ巨大地震が発生したとします。当然、太平洋ベルト地帯が壊滅的な被害を受ける可能性があります。その際、日本海側からの救援救助が必要になります。なぜなら太平洋側の港湾が悉く使用不可能になってしまうことが考えられるからです。
ところが、日本海側の主要港湾の一つである敦賀港の港湾能力は神戸港のそれの100分の1程度しかありません。災害拠点港として機能できるでしょうか。
このように、自然災害大国である日本国にとって港湾も防災安全保障を担う重要なインフラストラクチャーなのです。