当初、アベノミクス3本の矢は、①金融緩和、②財政出動、③成長戦略(技術開発投資など)のはずでした。
ところが一転して、いつのまにか①金融緩和、②緊縮財政、③構造改革(新自由主義やグローバリズムに基づく政策)に変貌してしまいました。
放たれたまともな矢は結局のところ①の金融緩和の矢、一本だけ。
その一方で、消費増税を含めた緊縮財政が行われ、なお、雇用規制の緩和(派遣法の改正)、電力の発送電分離や自由化、TPP協定の合意、農協解体にむけた法改正などなどの、いわゆるネオリベラリズム(新自由主義)とグローバリズムに基づく構造改革が容赦なく断行されました。
グローバリズムは国民経済を破壊します。国民経済の破壊とは、具体的には国民生活に関わる安全保障(国防だけが安全保障ではない)の弱体化と所得格差の拡大です。
例えばこのことは米国においても顕著です。
『ウォール街の報酬は25年で倍増、差は開くばかり-他業種の5倍に
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-11/O5GV356KLVRN01
ウォール街で働くバンカーや証券マンはボーナスの減少傾向を嘆くが、他の業界に比べれば恵まれている。格差はこの25年間にますます顕著になった。米労働省労働統計局のデータによれば、投資銀行バンカーと証券マンの給料・ボーナスを合わせた報酬は1990-2014年にインフレ調整後で117%増え、14年は26万4357ドル(約2860万円)となった。一方、その他の業種は21%の増加にとどまり5万1029ドル。ウォール街の約5分の1にすぎない。(後略)』
グローバリズムを一言でいうと・・・国境をこえた株主のための金融資本主義・・・と表現することもできます。
むろん、構造改革に邁進してきた我が国においてもそれは顕著です。
上のグラフのとおり、株主に対する配当金はここ数年、着実に上昇しています。
一方、労働分配率をみると、
デフレの長期化で、ただでさえ実質賃金が下落しているのに、このうえ労働分配率までもが低く抑えられてきたのですから個人消費が低迷しても不思議ではありません。
そのうえ2014年には消費増税まで断行されましたので、いかに家計が悲惨な状況にあるのかが解ります。
加えて、モノ言う株主に睨まれた企業経営陣たちは、株主配当を増やすため、四半期ごとの利益を優先させるようになりました。今や、名だたる企業群が未来への投資やメンテナンス費用を躊躇いなく削減してしまうご時世です。
消費者利益の名のもとに進められてきた構造改革。しかし、その構造改革を進めてきた結果、企業サイドの安全管理ミス等を主因とした各種事故が相次いでいるのは周知の事実です。